
デジタル技術の発展に伴い、さまざまな分野で新しい金融商品が誕生している。その代表的な例が暗号資産であり、これは従来の通貨や証券とは全く異なる性質を持っている。従来の金融では、中央の管理者が存在し、個人や企業は銀行などの金融機関を通じて資産のやりとりをしてきた。一方で、新たな資産である暗号資産は、中央管理者の存在を必要とせず、ブロックチェーンと呼ばれる分散型台帳技術によって取引が維持・管理されている。この特徴が金融分野にもたらす影響は極めて大きいものになっている。
まず、取引のスピードやコストが劇的に変化した点が挙げられる。従来は金融機関を介した国際送金の場合、多額の手数料や数日の時間が必要だった。しかし、暗号資産による送金は数分から数十分で完了するケースも多く、しかも手数料が低く抑えられることから、国際送金のあり方を大きく変えるポテンシャルを秘めている。また、金融包摂という観点でも重要視されている。世界には銀行口座を持たない人々が多数存在し、その理由は地理的・経済的な要因が絡んでいる。
パソコンやスマートフォンとインターネット接続環境があれば、誰でも暗号資産のウォレットを作成し、価値のやりとりが可能になるため、金融サービスへのアクセス向上に寄与している。一方で、暗号資産はその匿名性や取引の追跡困難さゆえ、ときに不正な資金洗浄や経済犯罪にも利用されてきた。世界各国の金融当局はこうしたリスクの高まりを認識し、取引所などの監督強化や、本人確認の徹底、疑わしい取引の報告義務など、規制を強化する動きが進められている。これにより、暗号資産をめぐる環境は従来より法整備が進み、一定の安心感や信頼性も徐々に向上してきている。税制に目を向けると、暗号資産の取扱いは複雑な様相を呈している。
まず、暗号資産で得た収益は、基本的に所得として課税の対象となる場合が多い。たとえば、取得した暗号資産を値上がり後に売却した場合、その売却益が所得として申告対象となる。また、暗号資産同士の交換や、暗号資産を使って資産を購入する場合にも所得が発生するとみなされることが多い。所得区分についても各国の制度により異なっており、給与所得や事業所得ではなく、原則として雑所得や譲渡所得に分類されることが一般的である。課税計算の観点から厄介なのは、暗号資産における多数の取引の記録、価格変動の激しさ、そして交換や利用の多様性にある。
たとえば、短期間に多数回の売買や交換を行えば、その都度、取得価額や時価、取得時期を正確に計算し、自身で所得計算をしなければならない。さらに、暗号資産で商品を購入したりサービスを受けたりした場合も、その取引時点の時価評価が税務処理に必要となる。これらの計算や記録は一般の個人納税者にとっては負担が大きく、専門的な知識やツールの利用が求められている。税務当局には暗号資産の取引データの追跡や把握が課題となっているが、近年は取引所への情報提供義務を課すなど、監視体制も高度化している。すでに多くの取引所が利用者本人の情報登録や本人確認手続きを徹底しており、大口取引や不審な資金移動については当局へ逐次報告されるようになってきた。
これにより脱税リスクの低減や金融犯罪の抑止につながるほか、健全な市場形成にも資する施策が進められている。暗号資産の市場規模は年々拡大の一途をたどっているが、その価値の変動幅は非常に大きいため、投資先としてのリスクも高い。国や地域によっては金融商品として高度な規制が課されたり、逆に利用や保有が完全に禁止されたりするケースも見受けられる。規制強化の目的は利用者や金融システムの保護、不正行為の抑止にある。加えて、税収確保の観点からもしっかりと管理されつつあり、個人に対する啓発や手続きサポートの必要性も高まっている。
今後予測されるのは、さらに精緻な法規制や税制の導入および、取引記録や所得計算を自動化・簡素化するための技術およびソフトウエアの普及である。利用者が自身の取引を容易に記録し、正しく納税できる環境づくりは、健全な金融市場を維持するうえでも不可欠とみなされている。さらに、暗号資産の技術進化によって金融サービスのあり方自体も変革しつつある。ネットワーク技術の進歩と規制面の整備、そして納税意識の向上が連動することで、この新たな資産クラスは今後の金融社会に大きな影響を与え続けるだろう。暗号資産は、中央管理者を持たずブロックチェーンにより取引が維持される先進的な金融商品であり、その登場は金融分野に大きな変化をもたらしている。
従来の金融機関を経由した国際送金に比べ、暗号資産は送金スピードやコスト面で圧倒的な優位性を示し、銀行口座を持たない層にも金融サービスへのアクセスを提供するなど、金融包摂の推進にも寄与している。一方、その匿名性や取引追跡の難しさゆえに、マネーロンダリング等のリスクが表面化し、各国当局は規制や監督の強化を進めている。暗号資産による利益には所得課税が課され、その計算は取引の多様性や価格変動の激しさから複雑で、納税者には専門知識やツールの活用が求められる。取引所への情報提供義務や本人確認厳格化も進み、脱税や犯罪抑止のための体制強化が図られているが、市場の変動幅が大きいことから投資リスクも高い。今後は法規制や税制のさらに精緻な整備、所得計算や記録の自動化技術の発展により、利用者が安心して取引・納税できる環境の構築が求められる。
暗号資産は技術革新と規制整備、納税意識の向上が連動することで、今後の金融社会に大きな影響を与え続けると考えられる。